9月から10月にかけて、当院には歯の外傷でお子さまが来院されることが増えます。運動会、体育祭、部活動、公園での転倒——季節柄、避けにくい事故です。
このとき、ご家族が最初の30分にどう動いたかで、その歯が残せるかどうかが大きく変わります。知っているかどうかだけの差なので、ぜひ覚えて帰ってください。
歯が完全に抜けてしまったら
抜けた歯は、探して持ってきてください。 そのうえで、次の3つを守ってください。
1. 根っこの部分を触らない
歯の根の表面には「歯根膜」という薄い組織が付いています。これが生きていれば、歯を元の位置に戻して再び定着させられる可能性があります。指でこすると、この細胞が失われます。持つときは白い頭の部分(歯冠)だけをつまんでください。
2. 絶対に乾かさない
歯根膜は乾燥にきわめて弱く、乾いた時点で望みが薄くなります。ティッシュに包む、ポケットに入れる——これが最もやってはいけない扱いです。
3. 適した液体に入れる
最も入手しやすいのは牛乳です。浸透圧と成分が歯根膜の保存に適しています。学校に「歯の保存液」が常備されていれば、そちらが最適です。水道水は細胞を傷めるため、他に何もない場合の一時しのぎと考えてください。本人が意識のはっきりした年齢であれば、唾液に浸すために口の中(頬の内側)に含んでおく方法もありますが、誤って飲み込まないよう注意が必要です。
そして、できるだけ早くご連絡ください。 一般に、時間が短いほど良好な結果が期待できます。
抜けていなくても、受診が必要なケース
- 歯がぐらついている
- 位置がずれた、めり込んだ
- 欠けた、ひびが見える
- ぶつけた直後は平気だったが、色が変わってきた
とくに**「その日は何ともなかった」ケース**にご注意ください。歯の神経は、衝撃から数週間〜数か月後に静かに失活することがあります。歯が黒ずんできて初めて気づく、という経過は珍しくありません。ぶつけた事実があれば、症状がなくても一度診せていただくのが安全です。
乳歯の場合は、対応が変わります
乳歯が抜けた場合、元に戻す処置は原則として行いません。下に控えている永久歯の芽に悪影響が及ぶ可能性があるためです。ただし、永久歯への影響がないかを確認する必要はありますので、受診はしてください。
防げる外傷もあります
コンタクトスポーツ(ラグビー、格闘技、バスケットボールなど)に取り組むお子さまには、スポーツマウスガードが有効です。歯や唇の外傷を減らすだけでなく、顎への衝撃をやわらげます。
市販の既製品もありますが、歯科で型を取って作るものはフィット感が違い、装着したまま呼吸や発声がしやすくなります。競技を続ける予定があれば、ご検討ください。
慌てる前に、ご連絡を
外傷は、ご家族のほうが動揺します。判断に迷ったら、まずお電話ください。状況をお聞きして、すぐ来ていただくべきか、応急処置をお伝えするかをご案内します。
【監修】医療法人 がもう四丁目歯科 理事長 廣松秀隆


